澁澤龍彦『うつろ舟』
エッセイはたくさん読んできたが、創作のほうはどうなんだろうと思って手にとった本書。うつろ舟のモチーフには以前から興味があったので、こちらの短篇集をチョイス。
結論からいうと、澁澤龍彦はやはりエッセイのほうが向いていると思う。日本を舞台とした幻想風の短編を集めており、どれもこれも素材的には非常に興味深いのだが、時々、物語の枠を飛び出るようなコメントが含まれていて、そういうことするなら始めからエッセイとして書いたほうが良かったのでは、と思うことがしばしばでした。「小説」としても悪くはない出来だけれど、明らかに世界観にそぐわない表現などが散見され、その都度これは半ばはエッセイなのだろうと思った。
それはともかく、澁澤は日本についても詳しいのだな、ということがよくわかる短篇集でした。博覧強記な人を見るにつけ、羨ましすぎてつい憎らしくなるのであった。
「虚舟」のみに話を限っていえば、柳田國男と折口信夫が分析しているらしいので、そちらのほうが面白いかもしれない(現在調査中)。あと、曲亭馬琴の「兎園小説」といった原典に当たったほうがいいかも。
参考:
折口信夫「霊魂の話」(青空文庫)
柳田國男「うつぼ舟の話」
【茨城新聞】UFO「うつろ舟」漂着地名浮上 「伝説」から「歴史」へ一歩
「神の容れ物としての石」というモチーフについても調査中。ミトラ(ミスラ)は石から生まれたのだそう。
幕末維新のパリ
日本人の洋行体験には以前から興味があったのと、山田風太郎の明治物に成島柳北が出てきて興味をもち、読んでみました。
幕末維新パリ見聞記――成島柳北『航西日乗』 栗本鋤雲『暁窓追録』 (岩波文庫)
- 作者: 井田進也
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2009/10/16
- メディア: 文庫
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幕末維新期に西欧に渡航滞在した二人、成島柳北と栗本鋤雲によるパリ見聞記。イギリスやイタリアなど他国の描写も含まれるが、やはりパリが中心。19世紀後半当時のパリの様子が日本人の手によって克明に記されており、逐一興味深い。ことに柳北は一日一日、日記のように記述しており、これをガイドブックとしてパリを散策するのも面白そう。
【メモ】
・ボアドブロン →ブーローニュの森
・グランドホテル →キャプシーヌ大通り(Boulevard des Capucines)のグランドホテル(le Grand Hotel de la Paix);ちなみにモネがキャプシーヌ大通りを描いている。
・ホテルドロールビロン →ラフィット街のバイロン卿ホテル(20, rue Laffitte)
・米蘭 →シャルル・ビュラン
・路尼 →レオン・ド・ロニー
当時の日本人在留者はオデオン座界隈に集中。オデオン座の脇、コルネイユ街にあった同名のホテルに西園寺公望も寄宿。
Media Markerのほうにもっと詳しいことを書いているので、興味があるかたはこちらも参照してくださいませ。
この本を読んだ時に、フランス語の表記(読み方)が違うような気がしていたのですが、上記の本では正確に書かれていました。プリンス昭武(フランス語だとプランス昭武となる)は、さすがに将軍の弟君だけあって結構な豪邸に住んでいたらしいです。当時から日本人は16区だったのね……と思うと感慨深い。
渋沢、杉浦らが住んでいたのは、シャグランではなく「シャルグラン」30番地。
こちらについても詳しくは下記に。
関連書籍:
読む本リスト
クランチのほうにメモった必読本リストをこちらにも。一部はすでに読めているので、既読のものは色分けしておきます。一部追加してます(※随時更新)。ぶっちゃけこのペースだと読書だけで寿命が尽きるわ……。
クランチは色分けなどできないので、そのためだけにブログ開設したようなものだけど、なんか続けられる気もしないし、どう使うかについては考え中。別にいらんという気もしてる、すごく。
「読まずに死ねるか」世界名作シリーズ:
『ギルガメシュ叙事詩』
『千夜一夜物語』(バートン版推奨)
『カレワラ』
プラトン『ティマイオス』
プロティノス『エネアデス』
オウィディウス『変身物語』
大プリニウス『博物誌』
ヤコブス・デ・ウォラギネ『黄金伝説』(第一巻の一部だけ既読)
ダンテ『神曲』
『薔薇物語』
『メリュジーヌ物語』 (既読はクードレット版なので、ジャン・ダラス版を読みたい)
アリオスト『狂えるオルランド』
『ロランの歌』
クレチアン・ド・トロワ『ランスロまたは荷車の騎士』
マリー・ド・フランス『十二の恋の物語』
シェイクスピア『リチャード三世』
コルネイユ『ル・シッド』
ボーマルシェ『フィガロの結婚』
ルソー『新エロイーズ』『社会契約論』
モンテスキュー『法の精神』『ペルシア人の手紙』
ディドロ『ラモーの甥』
ラクロ『危険な関係』(たしか途中ではたりと……)
カザノヴァ『回想録』 (パリに出てくるあたりで止まったような)
ハイネ『流刑の神々』
グリム『ドイツ伝説集』(上巻のみ既読)
ゲーテ『イタリア紀行』『親和力』
スタンダール『パルムの僧院』『チェンチ一族』
ミシュレ『フランス史』
フロベール『聖アントワーヌの誘惑』
ユゴー『レ・ミゼラブル』
デュマ『三銃士』
ゾラ『ジェルミナル』
ウィリアム・ブレイクの詩
W・B・イェイツ →詩とケルトとオカルト
イプセン『ペール・ギュント』
プルースト『見出された時』(「逃げ去る女」まで読んだ記憶)
T・S・エリオット『荒地』
ウンベルト・エーコ『フーコーの振り子』
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明らかに18世紀が苦手なんだろ、って感じ。あと、20世紀以降もなんだかあまり興味もてないのです。理論的すぎ、実験的すぎるせいかなー
当方は数年前までフランス文学研究なんてことやってたのですが、始めたのがやたら遅かったのと完全に専門馬鹿化してましたので、それもあり意外に有名作で読めてないのが多かったりします……恥。