澁澤龍彦『うつろ舟』
エッセイはたくさん読んできたが、創作のほうはどうなんだろうと思って手にとった本書。うつろ舟のモチーフには以前から興味があったので、こちらの短篇集をチョイス。
結論からいうと、澁澤龍彦はやはりエッセイのほうが向いていると思う。日本を舞台とした幻想風の短編を集めており、どれもこれも素材的には非常に興味深いのだが、時々、物語の枠を飛び出るようなコメントが含まれていて、そういうことするなら始めからエッセイとして書いたほうが良かったのでは、と思うことがしばしばでした。「小説」としても悪くはない出来だけれど、明らかに世界観にそぐわない表現などが散見され、その都度これは半ばはエッセイなのだろうと思った。
それはともかく、澁澤は日本についても詳しいのだな、ということがよくわかる短篇集でした。博覧強記な人を見るにつけ、羨ましすぎてつい憎らしくなるのであった。
「虚舟」のみに話を限っていえば、柳田國男と折口信夫が分析しているらしいので、そちらのほうが面白いかもしれない(現在調査中)。あと、曲亭馬琴の「兎園小説」といった原典に当たったほうがいいかも。
参考:
折口信夫「霊魂の話」(青空文庫)
柳田國男「うつぼ舟の話」
【茨城新聞】UFO「うつろ舟」漂着地名浮上 「伝説」から「歴史」へ一歩
「神の容れ物としての石」というモチーフについても調査中。ミトラ(ミスラ)は石から生まれたのだそう。